「メンバーどうやっても自信が持てないみたいで、なかなか一歩を踏み出せないんです」
そんな悩みを抱えるマネージャーの方は少なくありません。
マネージャーとして部下を育てたいと思っていても、本人に自信がなければ、任せた仕事を前向きに取り組んでもらえなかったり、失敗を恐れて挑戦を避けてしまったりするものです。
でも実は、自信というのは「与えるもの」ではなく、「積ませるもの」。
今回は、「小さな成功体験を積ませる」ことで部下の自信を育てていくマネジメントについて解説します。
「自信がない」部下の背景にあるもの
まず前提として、自信がない人は「能力がない」わけではありません。
- 失敗を過剰に恐れてしまう
- 完璧主義で基準が高すぎる
- 成果の見える機会が少なかった
- 上司からの承認が少なかった
など、環境や過去の経験が影響している場合がほとんどです。
このような部下に対して、いきなり「もっと堂々とやれよ」「任せてるんだから思いきってやってみてよ」と背中を押しても、なかなか行動にはつながりません。
必要なのは、「自信を持てるきっかけ」を意図的に作ってあげること。そのために有効なのが、「小さな成功体験を積ませる」マネジメントです。
小さな成功体験とは何か?
「成功体験」と聞くと、つい「大きな成果」や「目立つ功績」を思い浮かべがちです。
でも、ここで言う「小さな成功体験」とは、
- ひとつの業務をやり切れた
- 先輩に感謝された
- 作成した資料がスムーズに使われた
- お客様とのやりとりで「わかりやすい」と言ってもらえた
といった、ごく日常的な仕事の中での前向きな手ごたえや肯定的なフィードバックを指します。
このような積み重ねによって、「自分にもできることがある」「やってみれば意外といける」という感覚が芽生え、少しずつ自信につながっていきます。
成功体験を積ませるためにマネージャーができること
1. 意図的に“成功しやすい仕事”をアサインする
いきなり難易度の高い仕事を任せるのではなく、「これはこの人ならできる」と思える範囲で、成功率が高い仕事を割り当てます。
例:
- 提案資料の一部だけを担当してもらう
- 社内プレゼンでの前フリ部分だけ話してもらう
- 過去に似たような案件があり参考になるタスクを任せる
重要なのは、「この仕事は、あなたがやる意味がある」と丁寧に伝えた上で、任せること。本人に「期待されている」という感覚を持ってもらうことがスタートラインです。
2. 成功の“ハードル”を下げて設計する
成功体験を積ませたいなら、「成功ライン」をあらかじめ下げておくことも有効です。
たとえば、「8割完成できたらOK」「まずは期限内に提出できたらOK」など、成果物の完璧さではなく、プロセスの中にある達成ポイントを評価しましょう。
すると、本人にも「とりあえずやってみようかな」という気持ちが芽生えやすくなります。
3. 結果ではなく“取り組み”を認める
成功体験は、結果だけではありません。
たとえ目標に届かなかったとしても、
- 初めて資料をまとめた
- 期限を守った
- 自ら進捗報告してきた
こうした行動そのものを認め、「それができたことがすごい」と言葉でフィードバックしてあげることが大切です。
「見てくれていた」「認めてもらえた」という経験が、次の行動につながります。
4. 成功体験を“言語化”してフィードバックする
本人にとっては「なんとなくできただけ」の感覚でも、上司から
- 「あの資料、すごく見やすくてよかったよ」
- 「お客様の反応、あなたの説明のおかげだったね」
- 「この前の会話、的確だったから助かったよ」
と具体的にフィードバックをもらうことで、初めて「自分はこういうところが得意なんだ」と気づくことができます。
成功体験の言語化=自信の明確化です。
5. 成功体験をチーム内で“共有”してもらう
小さな成功を、チームメンバーと共有する場を作るのもおすすめです。
「最近、〇〇さんのこの対応が助かっていて〜」とチーム内で取り上げるだけで、本人にとっては大きな承認になりますし、他のメンバーにも良い刺激になります。
マネージャー主導で「ちょっと自慢タイムしよう」くらいの軽いノリでも十分効果があります。
小さな成功は「大きな挑戦」への土台になる
小さな成功体験を積み重ねていくことで、本人の中に「やってみれば案外できる」「失敗しても大丈夫」という安心感が育っていきます。
その結果、次第に
- 自分から「やってみます」と言えるようになる
- 難易度の高い仕事にも前向きに取り組める
- 部下自身が他のメンバーを育てようとする
といった行動変容が起きてくるのです。
自信がついてくると、表情やコミュニケーションにもポジティブさが表れ、チーム全体の雰囲気にも好影響を与えます。
おわりに|「成功させる環境をつくる」のがマネジメント
メンバーの自信は、指導だけでは育ちません。
マネージャーが「成功させるための仕掛け」を用意し、少しずつ成果を体験させていくことが何より重要です。
一つの成功が、次の挑戦の勇気になる。
だからこそ、「この人が輝ける場面はどこか?」を日々観察し、アサインを工夫していくことが、育成型マネジメントの第一歩だと思います。
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